• 25にっき
    2017/04/24(月) 18:29:35 ID:WUxND6t.O
    夕焼け

    いつものことだが電車は満員だった。
    そして
    いつものことだが若者と娘が腰をおろし としよりが立っていた。
    うつむいていた娘が立って としよりに席をゆずった。
    そそくさととしよりが坐った。
    礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
    娘は坐った。

    別のとしよりが娘の前に横あいから押されてきた
    娘はうつむいた。
    しかし
    又立って
    席をそのとしよりにゆずった。
    としよりは次の駅で礼を言って降りた。
    娘は坐った。

    二度あることは と言う通り
    別のとしよりが娘の前に
    押し出された。
    可哀想に。

    娘はうつむいて
    そして今度は席を立たなかった。
    次の駅も
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  • 27にっき
    2017/04/24(月) 19:21:11 ID:WUxND6t.O
    下唇をギュッと噛んで
    身体をこわばらせて−−−。
    僕は電車を降りた。

    固くなってうつむいて
    娘はどこまで行ったろう。
    やさしい心の持主は
    いつでもどこでも
    われにもあらず受難者となる。
    何故って
    やさしい心の持主は
    他人のつらさを自分のつらさのように
    感じるから。
    やさしい心に責められながら
    娘はどこまでゆけるだろう。
    下唇を噛んで
    つらい気持ちで
    美しい夕焼けも見ないで。

    吉野 弘
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