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とAが続ける。
「いいの?」
と言いながら、女性は俺達の方にゆっくり、本当にゆっくりと近づいてきた。
そこで俺はその女性の姿に妙な違和感を覚えた。上手く言葉にできないのだが、何かがおかしい。
YとAも同じような感じだったようで、俺達三人は顔を見合わせたり小首を傾げたりしていた。
手を伸ばせばもう手が届く、というところまで女性が近づいてきたところで、
俺はようやく違和感の正体に気付いた。
この女性には影が無い――
ありがちだな、と思った人もいるかもしれない。
しかし俺が言っているのはいわゆる影法師のことではなく(影法師もなかったかも知れんが)
人間の身体にかならずあるはずの、鼻の下や目の窪みといったところに出来る影のことだ。
まるで小学生が描いた人物画のように、その女性には陰影が全くなかったのだ。
その女性は、俺が違和感の正体に気付いたと知ってか知らずか俺の隣に座り
にたりと(決してにっこりと言ったようなものではない)歯を剥き出しにして笑った。
そこで俺はもう一つ、奇妙なことに気付いてしまった。