• 49アヤメのHな綱渡り
    2019/10/04(金) 00:01:09 ID:ipytgw7A0
    「困ったなー、誰もいないのかなー?」
    どーやら慌てて入った個室の紙が切れてたらしい

    無言を貫いてもいいけど
    困った男性が下半身丸出しでこちらの
    清掃具置き場にトイレットペーパーの予備を
    探しに来られても、とても困る

    最悪な事にトイレットペーパーの在庫は
    この清掃具置き場に余分な程あった

    助けずに、ここに取りに来た
    下半身スッポンポン男に見つかるか。
    あえて助けてやって見つかるか…

    下半身スッポンポン男に見つかるより
    人を助けて褒められる自分のまま見つかろう…
    悟りを開いたような心穏やかな気持ちで
    私は無言でトイレットペーパーを一つ
    隣に投げてあげた

    ポコンと相手の頭に
    落下したような気配があったけど
    気にしない気にしない

    「あ、ありがとうございます!助かります!」
    相手はそれを責めず、お礼を言ってきた
    (良い心がけです、若者よ)
    泉から出た女神様の気分で
    先ほど些細な事で
    呪ってやった事をちょっと反省した
    0 0
  • 50アヤメのHな綱渡り
    2019/10/04(金) 02:34:37 ID:ipytgw7A0
    扉が清掃具置き場と洋式便器ある部屋同じで
    慌てて入る人がいるなら
    なかには私がいる清掃具置き場の扉を
    間違えて開いてしまう人がいるかもしれない

    中から扉を開けられない今の私は
    いつ誰かに見つかってもおかしくない
    最悪の状況だった

    か弱い私でも壊せるかもしれない道具
    (ステッキブラシやホウキ)
    は一応あるけど大きな音がする事を覚悟して
    本気で何回かぶつけないとダメな気もする

    音が響き過ぎない程度でそれらも使って
    試しては見たけどやっぱりダメで開かない

    途方に暮れた私がミグさんに助けを求めようと
    スマホを取り出した時

    「オラァ!!こっち来いやクソジジイ!!」
    0 0
  • 51アヤメのHな綱渡り
    2019/10/04(金) 02:37:21 ID:ipytgw7A0
    突然、怒鳴りながら入ってくる一団がいて
    入ってくるなり私の閉じ込められている
    清掃具置き場の扉を
    「ドガンッ」と全力で蹴った!

    驚きすぎた私はスマホを落として
    硬い床で壊すまいと脚で挟み取ろうとして
    隣の個室に滑らせてしまった

    「あ!」
    思わず声に出してしまい
    とっさに口を押さえてしゃがみ込む
    「…」

    「人にぶつかっといて謝罪もなしかい!!
    俺は肩関節壊してメッチャイてーんだよ!!
    どーしてくれんだ、ゴラァ!!」
    怪我人にしては随分元気に
    また私のいる清掃具置き場の扉をぶん殴り
    誰か不幸なターゲットを脅している

    その他、数人がいるみたいで
    「マズイよマズイよーw
    ケンちゃん怒らせたら顔が原型とどめないくらい
    ボコボコにのされるゼw」
    「俺も親友、怪我させられといて黙ってられねーよ
    こいつシメるなら俺もやるゼ!!」
    「オイ立てや!!ブツクサ何いってんだ
    なめてんのかコラ!!」
    と煽るもの

    「ヒイィィッ、スミマセン許してください
    ゴメンナサイ!!」と
    とにかく謝る気弱なおじさんらしい声が
    0 0
  • 52アヤメのHな綱渡り
    2019/10/04(金) 02:39:49 ID:ipytgw7A0
    私も体がガタガタ震えて怖すぎて動けない。
    幸い今の声で気づかれてはいないみたいだけど
    もし見つかったら
    この乱暴なお兄さん達に何をされるかと思うと
    見つからない事を祈る事しかできなかった

    とにかくスマホを隣の個室から取り戻さないと
    マナーモードにしていると言えど
    着信して振動音でもしてしまえば一発アウト
    着信しなかったとしても
    スマホを見つけられたら隠れたままなのは
    絶対に不可能!なんとかしないと!!
    0 0
  • 53アヤメのHな綱渡り
    2019/10/04(金) 02:42:08 ID:ipytgw7A0
    焦る私を無視して扉の外では
    今だに親父狩りを続ける人達の喧騒がやまない。
    これだけ騒がしいなら
    少し程度の音なら気付かれないかも…

    震える身体を必死で抑えながら
    清掃具の束から一本だけ
    他の道具にあたって音をたてないように
    慎重に持ち手が細いホウキを取り出す

    壁に当たらないように
    ゆっくり足元の内壁間の隙間に差し込んで
    隣の個室に滑らせてしまったスマホを
    手元に引き寄せられないか探ってみた
    0 0
  • 54アヤメのHな綱渡り
    2019/10/04(金) 03:15:38 ID:ipytgw7A0
    第2章 前半まとめ
    -------
    >>36-44
    >>45-50
    >>51-53
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  • 55アヤメのHな綱渡り
    2019/10/04(金) 06:41:14 ID:ipytgw7A0
    シナリオA 悪夢
    ----
    「ぶぅぅーん…」
    私の動きが一瞬で凍りつく

    「ぶぅぅーん…」
    聞き間違いじゃない、スマホが振動していた。
    しかも振動は一度で止まらず連続する

    「ぶぅぅーん…」
    扉の外がどれだけ騒がしくても
    硬い床の上を直接振動して跳ねる
    スマホの音は強く空気を震わせて

    悪夢を見ているような背筋がゾワッとする感覚。
    (お願いやめて!気付かれる!)

    「ぶぅぅーん…」
    どれだけ祈っても手を離れ操作できない
    私のスマホは
    持ち主の意思を無視して振動し続け
    まるで母親にかまってもらえず
    駄々をこね床を転げまわる拗ねた子供の様に
    床を叩き続けた

    「ん?なんか音しねぇ?」
    気づかないで欲しいと祈る私の願いも虚しく
    乱暴そうな男達の一人が気付き
    「あぁ???中に誰かいるんかい?」
    他の人達も気付き始めた

    体を小さくして頭を抱え
    (もうダメ!もうダメ!助けて!お父さんお母さん!)
    涙を流して男達に見つかった後の未来に絶望し
    恐怖する
    0 0
  • 56アヤメのHな綱渡り
    2019/10/04(金) 07:00:36 ID:ipytgw7A0
    「うわぁーーーっやめてくれーーーっ」
    いきなり脅されていた気弱なおじさんが
    ここぞとばかりに大きく吠えて
    スマホの音に気を取られ隙だらけだった
    怖いお兄さん達の包囲に体当りして
    なんとか外に出ると一目散に逃げていく

    「あ!くそ逃げられた!」
    せっかく追い詰めて
    あと少しで目的も達成できた獲物を
    喉首噛み切る直前に逃がしてしまった獣達は
    その八つ当たりを今だ音のする方向に向ける

    「ドガンッ」
    「んだゴラ、邪魔しやがって!!」
    イライラを伝えるように力任せに開けられた扉。
    だがその奥には
    期待した八つ当たりする為の相手が誰もいなくて
    リーダー格らしい男はキョトーンとしてしまう。

    「あ、あそこ!床にスマホがありますぜ!」
    「なんでホウキが床に生えてんだ???」

    不自然に隣の個室から伸びるホウキは
    明らかに目立って私の居場所を男達に伝え

    出鼻をくじかれた男達は
    今度はゆっくりと慎重に扉を開ける
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