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いつものことだが
電車は満員だった。

そして
いつものことだが

若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。

うつむいていた娘が立って

としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。

礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。


「夕焼け」 吉野弘

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