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制限60キロの有料道路の長い下り坂で、
ピタリと3メートル後ろにコバンザメされたことがある。女2人の軽だった。

制限速度を守るのは結構だが、2車線の道はガラガラ。
何が悲しくてダンゴ走行したいのか。

なるほど。
ゲームしてるんだ。

退屈な定地走行に刺激が欲しくて、車間保持テクニックに自己陶酔しているらしい。

そういう運転、違法じゃないよ。

でも、自動車学校で「こんなこと」習わなかった?

私は思いっきり──急ブレーキ!

タイヤから煙があがった。
予告のない急激なブレーキ。
「自殺」そのものだった。

その「自殺」にみずから巻きこまれに来たのは、まぎれもなく公道ゲーム中の女のほうだ。

一生に何回も経験しないであろうパニックのなか、必死のブレーキで追突を免れた。奇跡に近かった。

楽しいゲームの対価は高すぎた。

その横を、悠々と右車線から追い越していった黒い車がいた。

車間距離を保って、高見の見物をきめこんでいたその日産車は、クラクションを短く鳴らした。

「ナイス、再教育」

私はそう受けとった。
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