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20年も昔の話。

運転台が高く、見晴らしがいいから調子に乗って、
30秒に一回は右へ左へ車線変更をして、3車線の国道で遊んでる隣県ナンバーのワンボックスがいた。

半分は挑発のつもりだったらしい。
私が第一車線から追い抜きざまに、「まっすぐ走れ!」と怒鳴ったら、
バトルの相手が見つかっとばかり、エンジンを唸らせて、強引に車線変更してきた。
まんま石橋だ。

私は軽セダン。
狭い道・曲がりくねった道・離合が困難な道へ誘いこんでやる。隣県ナンバーに勝ち目はないよ。
信号が青になったらゲームスタートだね。

この時、信号待ちしていたのは、①私の軽②大型バイク③石橋の順で、何にも知らないバイクがいたのが、石橋の運のツキ。
だって石橋は窓を開けてジュースの空き缶を投げつけたんだから。

そのとたん、中年ライダーはスタンドを立ててバイクを降り、ワンボックスのドアをバンと開けて、石橋の胸ぐらをつかんだ。

バイクにとって空き缶は危険物。怒らないわけがない。

「あの軽を狙ったんだ」なんて、しどろもどろな言い訳をしているらしい。みっともない。

石橋がボコボコにされるのは必至だった。それで懲りるといい。
車という武器でカモフラージュされた、卑屈で矮小な男よ。

周囲の車は、とばっちりがイヤだから、完全に沈黙。
私も、あとは知らない。信号が青になったから、アクセルを踏んだ。
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