• 466昭和22年9月1日kXhadbbetg
    2019/09/01(日) 07:07:59 ID:.unRAnCUO
    http://p.to.cx/img/data/1567287900.jpg

    木炭バスと言われても、想像もつかない。
    ただ、故障が多かったとか。

    それでも、その日の故障は最悪だった。
    長崎市の北の入り口、打坂。馬を鞭で打たないと登らない坂という意味らしい。またの名を地獄坂。曲がりくねった道、片側は崖。現在では想像もつかないが、当時の地形図はまさにそうなっている。

    そこで故障。

    ハンドルもブレーキも効かない、最悪の事態。

    バスはずるずると崖に向かって後退していく……。

    若い車掌が飛び降りた。

    近くの石をタイヤに噛ませ、輪止めとするが、三十余の乗客の重みのかかった車体はそれを乗り越えた。

    ずるずると、ずるずると、崖へ。

    しかし、奇跡は起きた。

    何かに乗り上げてバスは止まった。

    ……もう、想像はつくのではないだろうか。降り立った乗客や運転手が見たものを。

    横たわった車掌の体と、それに乗り上げたタイヤ……。


    「息はある!」

    自転車の急報を受けた麓の営業所の職員は、軽トラックで現場に戻り、彼を荷台に載せた。
    炎天下。その息は徐々に弱くなっていく。

    ……結局、助からなかった。

    この勇敢な車掌の名は、鬼塚道男さん。享年、二十一。


    これだけの出来事なのに、長く人々の記憶から消えていた。
    それが一番 信じられない。

    現場に地蔵尊が祀られ、顕彰碑が建ったのも、事故から時を経てからだった。


    語る義務があるのではないか? 知った者には。

    騙りがあってもいいのではないか?  顕彰の目的ならば。

    SNSは、その手段となりえないか?

    何度でも、語る。間違いを恐れずに、語る。

    涙にぼやける液晶画面に、すべてを託す。

    今日も地蔵尊は、安全と生活を見守っている。

    生者が怠惰ではいられない。

    …………………………………
    (長崎自動車株式会社のホームページもご覧下さい)
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