たとえ獲物が小さくとも獲物は獲物だ。
ずる賢いオオカミ達が
ただこのまま開放する事はなかった
早速、値踏みと分け前分配に
ヨダレを垂らしながら
捕らえた小動物をツンツン、クンクンと
軽くいたぶりつつ
己がどこに噛み付くか
最も美味しそうなトコロを仲間より先に
かすめ獲ろうと
無駄なあがきをしようとしている小動物に
こっちにおいでと甘い声をかける
「どーしたの?入り口間違えた?ここ男子便所だよ?」
「可愛いねぇ。どこの学校?」
「そんな奥に縮こまってないでこっちに来なよ」
「女子便所混んでて借りに来たの?
使い方がわからないなら
お兄さん達が優しくエスコートするよw」
出来るだけ逃げようと八方塞がりの穴の中に
それでも潜ろうとするソレに爪を伸ばし
引っ張り出そうとオオカミ達は狭い入り口に殺到した
どちらを向いても壁しかなくて
唯一でられる扉には乱暴なお兄さん達が殺到している
「こんな所で何してたの?」
「お兄さん達がブリブリひり出す音聞いて興奮してたの?」
「可愛い顔して痴女さんなんだねw
そんなに見たいなら見せてあげるよw」
「こっちにおいでwお兄さん達は優しいよw」
縄張りに入り込んできた愚かな獲物に
今からおこる悲劇は自業自得と言いながら
鋭く研いだ爪を伸ばす
「こんな所に一人で入ってきたら
何がおきるかわかってたんじゃないの?」
「恥ずかしがらなくても望んでた事一杯してあげるよ」
そんなつもりで入ったんじゃない!と
心の中で反論しながら
実際、ここに入ったのは不純な理由。
結局はそーゆー人達と私も同じなのだと
愚かな自分を見抜かれ辱められて
「つ か ま え た w」
ついに爪が届いた、それを
さらに牙が届く範囲に引っ張り出そうと
グイグイ力任せに引き寄せる
「いっ…!」
強く抵抗し
断末魔の悲鳴を響かせようと口を大きく開いた時
「ドガンッッ!」
直後、口を押さえつけられ
足が浮き上がるほど後ろの壁に高く持ち上げられて
私は軽々、壁に叩きつけられた!
「叫んだら…、お兄さん達が
どれだけ興奮するかわかってるよね?」
「可愛い顔が二度と鏡見れないくらい
醜く歪んじゃうよー?」
ふるえが止まらず、声も出せなくなった
逆らえば何をされるかわからない


ゆっくり、ゆっくり開かれていく扉を
まるで映画でも見ているような他人事のように
現実感のない視点で見ながら
開かれた扉には誰もいない
怖い人達が私に近づく筈がないと
現実逃避し続けた
でもいくら都合よく現実逃避し続けたとしても
神様は残酷で、変えようのない事実に対しては
奇跡をなしてくれない
「なんでガキが、こんな所に???」
見つけた予想外の邪魔者の正体に
呆気にとられる男達
恐怖にふるえる視線を向け
小さく縮こまり動けずにいる小動物を前に
どーしたものかと4匹のオオカミは
獲物の小ささに顔を見合わせる