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扉が清掃具置き場と洋式便器ある部屋同じで
慌てて入る人がいるなら
なかには私がいる清掃具置き場の扉を
間違えて開いてしまう人がいるかもしれない
中から扉を開けられない今の私は
いつ誰かに見つかってもおかしくない
最悪の状況だった
か弱い私でも壊せるかもしれない道具
(ステッキブラシやホウキ)
は一応あるけど大きな音がする事を覚悟して
本気で何回かぶつけないとダメな気もする
音が響き過ぎない程度でそれらも使って
試しては見たけどやっぱりダメで開かない
途方に暮れた私がミグさんに助けを求めようと
スマホを取り出した時
「オラァ!!こっち来いやクソジジイ!!」 -
突然、怒鳴りながら入ってくる一団がいて
入ってくるなり私の閉じ込められている
清掃具置き場の扉を
「ドガンッ」と全力で蹴った!
驚きすぎた私はスマホを落として
硬い床で壊すまいと脚で挟み取ろうとして
隣の個室に滑らせてしまった
「あ!」
思わず声に出してしまい
とっさに口を押さえてしゃがみ込む
「…」
「人にぶつかっといて謝罪もなしかい!!
俺は肩関節壊してメッチャイてーんだよ!!
どーしてくれんだ、ゴラァ!!」
怪我人にしては随分元気に
また私のいる清掃具置き場の扉をぶん殴り
誰か不幸なターゲットを脅している
その他、数人がいるみたいで
「マズイよマズイよーw
ケンちゃん怒らせたら顔が原型とどめないくらい
ボコボコにのされるゼw」
「俺も親友、怪我させられといて黙ってられねーよ
こいつシメるなら俺もやるゼ!!」
「オイ立てや!!ブツクサ何いってんだ
なめてんのかコラ!!」
と煽るもの
「ヒイィィッ、スミマセン許してください
ゴメンナサイ!!」と
とにかく謝る気弱なおじさんらしい声が -
私も体がガタガタ震えて怖すぎて動けない。
幸い今の声で気づかれてはいないみたいだけど
もし見つかったら
この乱暴なお兄さん達に何をされるかと思うと
見つからない事を祈る事しかできなかった
とにかくスマホを隣の個室から取り戻さないと
マナーモードにしていると言えど
着信して振動音でもしてしまえば一発アウト
着信しなかったとしても
スマホを見つけられたら隠れたままなのは
絶対に不可能!なんとかしないと!! -
焦る私を無視して扉の外では
今だに親父狩りを続ける人達の喧騒がやまない。
これだけ騒がしいなら
少し程度の音なら気付かれないかも…
震える身体を必死で抑えながら
清掃具の束から一本だけ
他の道具にあたって音をたてないように
慎重に持ち手が細いホウキを取り出す
壁に当たらないように
ゆっくり足元の内壁間の隙間に差し込んで
隣の個室に滑らせてしまったスマホを
手元に引き寄せられないか探ってみた -
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シナリオA 悪夢
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「ぶぅぅーん…」
私の動きが一瞬で凍りつく
「ぶぅぅーん…」
聞き間違いじゃない、スマホが振動していた。
しかも振動は一度で止まらず連続する
「ぶぅぅーん…」
扉の外がどれだけ騒がしくても
硬い床の上を直接振動して跳ねる
スマホの音は強く空気を震わせて
悪夢を見ているような背筋がゾワッとする感覚。
(お願いやめて!気付かれる!)
「ぶぅぅーん…」
どれだけ祈っても手を離れ操作できない
私のスマホは
持ち主の意思を無視して振動し続け
まるで母親にかまってもらえず
駄々をこね床を転げまわる拗ねた子供の様に
床を叩き続けた
「ん?なんか音しねぇ?」
気づかないで欲しいと祈る私の願いも虚しく
乱暴そうな男達の一人が気付き
「あぁ???中に誰かいるんかい?」
他の人達も気付き始めた
体を小さくして頭を抱え
(もうダメ!もうダメ!助けて!お父さんお母さん!)
涙を流して男達に見つかった後の未来に絶望し
恐怖する -
「うわぁーーーっやめてくれーーーっ」
いきなり脅されていた気弱なおじさんが
ここぞとばかりに大きく吠えて
スマホの音に気を取られ隙だらけだった
怖いお兄さん達の包囲に体当りして
なんとか外に出ると一目散に逃げていく
「あ!くそ逃げられた!」
せっかく追い詰めて
あと少しで目的も達成できた獲物を
喉首噛み切る直前に逃がしてしまった獣達は
その八つ当たりを今だ音のする方向に向ける
「ドガンッ」
「んだゴラ、邪魔しやがって!!」
イライラを伝えるように力任せに開けられた扉。
だがその奥には
期待した八つ当たりする為の相手が誰もいなくて
リーダー格らしい男はキョトーンとしてしまう。
「あ、あそこ!床にスマホがありますぜ!」
「なんでホウキが床に生えてんだ???」
不自然に隣の個室から伸びるホウキは
明らかに目立って私の居場所を男達に伝え
出鼻をくじかれた男達は
今度はゆっくりと慎重に扉を開ける
どーやら慌てて入った個室の紙が切れてたらしい
無言を貫いてもいいけど
困った男性が下半身丸出しでこちらの
清掃具置き場にトイレットペーパーの予備を
探しに来られても、とても困る
最悪な事にトイレットペーパーの在庫は
この清掃具置き場に余分な程あった
助けずに、ここに取りに来た
下半身スッポンポン男に見つかるか。
あえて助けてやって見つかるか…
下半身スッポンポン男に見つかるより
人を助けて褒められる自分のまま見つかろう…
悟りを開いたような心穏やかな気持ちで
私は無言でトイレットペーパーを一つ
隣に投げてあげた
ポコンと相手の頭に
落下したような気配があったけど
気にしない気にしない
「あ、ありがとうございます!助かります!」
相手はそれを責めず、お礼を言ってきた
(良い心がけです、若者よ)
泉から出た女神様の気分で
先ほど些細な事で
呪ってやった事をちょっと反省した