ステルス機
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少しまた時代を遡りますが軍備にばかりお金をかけ過ぎて兵器以外の分野では諸外国より良い物を持てなかったソ連では外貨獲得手段としては兵器の輸出しか手段がほとんど無かったため戦闘機の輸出に力を入れていて重要な輸出の商談の場となる航空ショーでは他国よりも必死なアピールを続けていました。
そのためソ連の戦闘機の飛行演技はいつも危険スレスレなアクロバット飛行を繰り返していました。
中でも1989年のパリ航空ショーではソ連製スホーイSu-27フランカー戦闘機が極限ギリギリの飛行と称するコブラ機動という飛行を世界で初めて人々の目の前で披露したりしていました。
ソ連としてはなりふり構わないセールス活動だったのでしょうが西側諸国の軍事専門家や航空機専門家の間ではコブラ機動なんて只の虚仮威しだという専門家も多く実戦では何の役にも立たないアクロバット演技だと評されていました。
それでも外貨獲得に執念を燃やすロシア人はフランカー戦闘機にも改良を加え飛行技術にも改良を加えコブラ機動からフック機動へ更にはクルビット機動へと進化させ極限飛行のアクロバット演技を世界の航空ショーで繰り返して現在に至っています。
ロシア人は我々の飛行機と飛行技術は最高なのだとアピールしているようでしたが航空ショーで披露していないだけでアメリカを含む諸外国でも同様の研究は既に行われており特にアメリカではロシア人に匹敵するかもしくは凌駕するほどの研究成果を達成していました。
東西冷戦時代だった当時、戦争が起こったら数で圧倒的なワルシャワ機構軍の爆撃によりほとんどの西側諸国の基地の滑走路は破壊されると予想しその対応策を考える必要性に迫られ垂直離着陸機や短距離離着陸機の開発を進めていました。アメリカは垂直離着陸機開発には失敗し西側諸国の中ではイギリスのハリアー垂直離着陸戦闘機が唯一実用化に成功しましたが最高速度が遅く航続距離も短く武器搭載量も少ないという欠点がありました。
そのためアメリカは滑走路が爆撃されても破壊されていない健在な部分を使って離着陸出来る短距離離着陸機で尚且つ高機動性を備えた戦闘機の研究開発を長年に渡り続けていました。
研究開発はF-15イーグル戦闘機やF-16ファイティングファルコン戦闘機やF-18ホーネット戦闘機をそれぞれ改造して行われていました。
その研究の一部として推力偏向ノズルや推力偏向パドルの研究開発も行われていてロシア人が航空ショーで披露してまわっていたような機動飛行は当然可能な技術も既に持っていました。アメリカの推力偏向装置の場合は二次元式も三次元式もノズルもパドルも試しその結果として先進戦術戦闘機計画に適合する二次元式推力偏向ノズルを選択しF-22ラプター戦闘機として具体化しました。
F-22ラプター戦闘機はステルス性能は持ちながらバックフリップやフラットローテーションなど呼び名こそ違うもののロシア人のいうコブラやフックやクルビットなどの機動飛行と同様な機動飛行はもちろん行えます。
世界で初めて一般民衆の前でコブラ機動が披露された当時の航空専門家の多くは虚仮威しだといっていましたが結局のところロシア人のいうコブラやフックやクルビットなどの機動飛行もアメリカ人のいうバックフリップやフラットローテーションなどの機動飛行も実戦では使えない機動ではなく有用な機動でありいかにして敵機に常に機首を向けていられるかが勝敗の鍵になるということなのでした。
結論をいえば当時の専門家の多くは明らかに間違ったことをもっともらしくいっていたということでした。
・コブラ機動の概要図(当時スホーイSu-27フランカー戦闘機のテストパイロットだったビクトール・プガチョフ氏の名前にちなみプガチョフ・コブラと呼ばれていました。)(能力のない普通の飛行機でコブラ機動をしようとすれば失速して墜落するといわれ、後から判った話ですがインドネシア空軍の韓国製練習機兼軽攻撃機T-50ゴールデンイーグルのアクロバット飛行中の墜落はコブラ機動らしき飛行をしようとしていたのが原因のようだという話も出て来ています。)
・フック機動の概要図
・クルビット機動の概要図
を貼ります。 -
これらの機動の目的は常に敵機の方へ機首を向け続けることにありそれが出来れば進化して真後ろから以外の方向からでも発射可能になった最近の赤外線誘導ミサイルの高性能化と相俟って敵に勝てるというものでした。
現在ではこれらの機動が可能になったことにより縦方向でも横方向でも斜め方向でもあらゆる方向へ瞬時に機首を向けることが出来るようになりました。
ソ連空軍が目論んでいた能力というのはこれだったのでした。
これを達成するための最初の第一歩が正にコブラ機動だったのでした。
それを理解出来なかった専門家は軒並み馬鹿にした批評をしていたのでした。
これらの機動について今どう思っているのか質問出来るなら質問してみたいです。
どう釈明するのか。
同様の研究開発をしていた当時のアメリカの本物の専門家たちは心の中で笑っていたはずです。 -
そんなソ連 コブラ機動をより一層実用的な武器にすべくスホーイSu-27フランカー戦闘機の試作機を改造して推力偏向ノズルの試験を繰り返していました。
・結局採用には至りませんでしたがその試験機の一つがこれ右側エンジンノズルは通常型で左側エンジンノズルは二次元式推力偏向ノズルが装着されています。アメリカのものに比べると推力偏向ノズル部分は大柄ながら薄い鉄板で作られているようで見るからにちゃちに見えるのは私だけでしょうか。
の写真を3枚貼ります。 -
そのソ連の二次元式推力偏向ノズルを装着して試験を繰り返していたフランカー戦闘機試作機の後ろからの写真を2枚貼ります。
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二次元式推力偏向ノズルに有効性を見出だせなかったのか、実用化するのに技術的不安を覚えたのか、ソ連は結局二次元式推力偏向ノズルの採用は行わず円筒形の形をした三次元式推力偏向ノズルを採用しました。その最初がスホーイSu-37テルミナートル(ターミネーター)。
次に採用されたのがロシアのステルス戦闘機スホーイT-50でした。
・カナード翼/主翼/水平尾翼という3サーフェイス化された操舵系と三次元式推力偏向ノズルを調和させ高い機動性を手に入れたスホーイSu-37テルミナートル(ターミネーター)の写真。
・強いロシアの復活を目指すプーチン大統領と一緒に写るロシアの最新ステルス戦闘機スホーイT-50の写真。
一見カナード翼は付いていないように見えますが実はステルス性能を犠牲にしないような工夫を凝らしてカナード翼を付けています。こちらもカナード翼/主翼/水平尾翼という3サーフェイス化された操舵系と三次元式推力偏向ノズルを調和させ高い機動性を手に入れたところは継承されています。
を貼ります。 -
一方アメリカでは1980年代終盤から1990年代初めにかけてF-15S/MTD短距離離着陸及び機動テクノロジー研究機やF-15ACTIVE 統合航空機先進制御テクノロジー実験機やF-16VISTA(可変安定飛行の試験機)/MATV(多軸推力偏向の試験機)やF-18HARV高迎え角研究機と米ロックウェル社/独MBB(メッサーシュミット・ウント・ベルコウ・ブローム)社共同開発によるX-31Vector高機動性研究機などなどたくさんの実験機が制作され研究がなされていました。そのためアメリカの関係者はソ連やロシアが研究開発し満を持して世界中の航空ショーで自慢の高機動飛行を披露してまわっていた演技を見てもまったく驚いてもいなかっただろうと考えられます。
そこには同じような分野で自分たちも十二分過ぎるほど研究開発を行って来たという自信が裏打ちされていたのだろうと考えられます。
それらはそのままあるいは改良を加えながら現在のアメリカのステルス機にも継承されています。
今現在のところはステルス機については世界中でいってもアメリカの一人勝ち状態が続いているのは否定出来ない事実です。
・二次元式推力偏向ノズルを付けたF-15S/MTD短距離離着陸及び機動テクノロジー研究機の写真。
・三次元式推力偏向ノズルを付けたF-15ACTIVE 統合航空機先進制御テクノロジー実験機の写真。
・F-16VISTA(可変安定飛行の試験機)/三次元式推力偏向ノズルを付けたF-16MATV(多軸推力偏向の試験機)の写真。
を貼ります。 -
F-15S/MTD短距離離着陸及び機動テクノロジー研究機やF-15ACTIVE 統合航空機先進制御テクノロジー実験機に使用されているカナード翼はF-18ホーネット戦闘機の水平尾翼だといわれています。
このカナード翼はエアブレーキとしても使われるためコックピットの後方にあるエアブレーキは通常のF-15イーグル戦闘機のものより面積の小さいものになっています。
・エンジン1基につき3枚の推力偏向パドルを付けたF-18HARV高迎え角研究機と米ロックウェル社/独MBB(メッサーシュミット・ウント・ベルコウ・ブローム)社共同開発によるX-31Vector高機動性研究機の写真。
を貼ります。 -
世界各国のステルス機のジェット排気口はこのような仕様になっています。という写真を貼ります。
中国の殲20は在来型戦闘機と同じ固定式のジェット排気口、ロシアのスホーイT-50は円筒型の形をした三次元式推力偏向ノズルというジェット排気口、アメリカのF-22ラプターは犬歯状の形をした二次元式推力偏向ノズルというジェット排気口、アメリカのF-35は円筒型ながら鋸状の形をしていてB型の場合は垂直離着陸を行う関係上 真後ろと真下に向けて方向を可変出来る推力偏向ノズルというジェット排気口でした。 -
ご覧のように世界各国のステルス機のジェット排気口はその国その国の考え方や持てる技術力により大きく異なる結果となっています。
動力であるジェットエンジンの良し悪しによっては機体そのものがいくら素晴らしくてもその性能を発揮することは出来なくなります。
ジェット排気口の良し悪しもまったく同様でこれによって各国のステルス機の能力は概ね決定的になってしまいます。
そういう目で写真を見てもらえると良いと思います。 -
通常一般的な飛行機は水平飛行状態で機体の姿勢が30度前後になってもそのまま飛行を続けようとすれば翼上面の気流が剥がれ失速を起こし機体制御が出来なくなり落ちる木葉のように墜落してしまいます。
ソ連のスホーイ設計局が作ったスホーイSu-27フランカー戦闘機が1989年のパリ航空ショーで世界初のコブラ機動を披露した時に痛く自慢げだった理由はここにあります。
スホーイSu-27フランカー戦闘機のコブラ機動というのは真っすぐ飛行しながら機首を持ち上げ120度近くまで角度を取りゆっくり元の水平状態に戻すこの間ずっと前方へ飛行しているのはそのままという飛行だったからでした。
通常の飛行機ならば当然失速し墜落しているような状態を平然と飛行出来たからでした。
スホーイSu-27フランカー戦闘機のコブラ機動とまではいきませんがこれは機動飛行中のロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡの写真とF-35B(垂直離着陸機型)の特殊な推力偏向ノズルの様子がはっきりわかる写真です。
F-35のジェット排気口の場合は垂直離着陸をするためにB型のみジェット排気口が真後ろと真下に偏向可能なノズルになっていますがこれは本来は高機動性飛行を行うためのものではありません。
しかしこのような機動飛行も出来ますということなのでしょう。
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双発エンジンに双垂直尾翼という姿であるため比較する対象物がない単機状態では一見大柄な機体であるかのように見えますが世界各国が開発しているステルス機の大きさに比べれば1番小柄な小さい機体となります。
F-16戦闘機かF-2戦闘機程度とかなり小型の機体です。
何時になるんだ?何時になるんだ?と多方面でささやかれていた日本製ステルス機の実機の初飛行はいよいよ来月2月の中旬になる予定です。